ダッキーでの川下り
ダッキーに関する一考察
文書の作成日 / 2003年1月19日
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【ダッキー】
 本体が合成ゴムの空気室でできている1〜2人乗りのゴム製カヤック。正式には、インフレータブル・カヤックInflatable Kayakという。「ダッキー」(アヒルの意)とは、このインフレータブル・カヤックが水面を進む後姿がアヒルの泳ぐ後姿に似ていることから付けられた通称である。
  最初に購入した、そして現在もメインで乗りつづけているダッキーは、AIRE社のLYNXU(二人艇)である。
 時期は大学2回生の夏。
 その前年にファルトボート(フォールディング・カヤック)で四万十川を下っており、キャンプしながらゆったりと川を下るという遊びを一人でもやりたかったこと、また、ラフトを始めた頃で、激流下りに毒されつつあったことが購入の動機である。
 当時、購入にあたってとくに絶対条件としていたのは、
 @耐久性の高さ(岩にぶつけたり、底を擦ったりしてもびくともしないこと)
 A安定性の高さ(3級クラスの瀬でも沈せずに下れること)

の二点である。単独行でのフネの故障や激流での沈は、致命的なトラブルにもなりかねないからである。

 カヌーには、大きく分けてカヤックとカナディアンカヌーがある。さらに、それぞれの用途別に、ダウンリバー、スラローム、ロデオ、ワイルドウォーター、ツーリング、レーシングなどのタイプがあり、形状についてもリジッド(一体型)、フォールディング(組み立て式)、インフレータブル(空気注入式)など多岐に渡る。この中から、自分のやりたい遊びが最も活かせるものを選ぶことになる。当時の私がやりたかったのは上述のとおり、のんびりキャンプツーリング&激流下りという遊びであったから、適正ボートはファルトか、ダウンリバー・カヤックか、ダッキーということになる。

 まず、ファルトである。ツーリングといえばすぐそれを思い浮かべるほどそのイメージは定着しているし、憧れも少なくなかったが、上記の二点(耐久性と安定性)ではダッキーより劣る。また、セットアップやメンテナンスも面倒くさい。ということで、、購入対象から外すこととした。
 次に、カヤックについてであるが、積載の面では物足りないが、@の耐久性については問題ないし、Aの安定性に対しても、エスキモーロールをマスターすればクリアーできる。しかし、カヤックをやるとなると、クルマが必須である。当時貧乏学生であった私にはそんなもの持っているわけがなく、もちろん、免許もなかった。クルマを運転できるようになるまでには、多大な時間と労力がかかるが、その時間と労力は川で遊ぶほうに使いたい。したがって、クルマは使えず、電車での移動がベースになるが、カヤックは折り畳みができないので、対象から外れることとなった。
 ダッキーなら、直進性や回転性など運動性能の面では他の二つ(ファルト、カヤック)に劣るが、耐久性、安定性の高さに関しては申し分ない。また、折り畳めるので、電車を使って移動することも可能である。結局、私の「のんびりキャンプ&激流下り&電車で移動」という志向を満たすのはダッキーだということになる。
 以下では、ダッキー(リンクス二人艇)のメリットとデメリットを整理した。
ダッキー(リンクスU)のメリット ファルト カヤック
耐久性が高い。岩に激突しようが、底を擦ろうが平気。壊れることを気にしなくて下れるというのは大きな魅力である。ちなみに、現在まで7年間使用して、破れたことは一度もない。 ×
安定性が高い。初心者でも長良川レベルの激流を下れてしまう。 ×
折り畳める。収納する場所も取らないし、キャリーに乗せれば電車での移動も可能。 ×
荷物がたくさん積み込める。テント、シュラフなどキャンプ道具を載せてもまだ余裕がある。そのお蔭で他人の荷物まで運ばされることが多いのがたまにキズ。 ×
セットアップが楽。空気を注入するだけでよいので、10分もあれば終わる。後片付けも、空気を抜くだけで終了。 ×
メンテナンスが楽。ほぼメンテナンスフリー。材質が安定しているので、濡れたままにすると変形するとか傷むといったことがない。 ×
ダッキー(リンクスU)のデメリット ファルト カヤック
見た目がイマイチ。「ダッキー」とはよく言ったもので、漕ぎ進む後姿は本当にアヒルのよう。渋いというよりはひょうきんに見えてしまう。
瀬遊びの種類が限られる。サーフィンくらいならできるが、エンダーやカートホイールといったプレイは不可能。 ×
ロールができない。自ずと下れる川に限界ができてしまう。
カヤックに比べると直進性や回転性の面で劣る。小回りがきかないので、テクニカルな瀬を下るときには早め早めの判断を下さなければならない。
 ここから見ても、ダッキーは、ツーリングや激流下りに非常に適したフネであるということが分かる。当時の私のようなスタイルでカヌーをやる人間には、ダッキーが一番向いているのだろう。瀬遊び(スポットプレイ)が不可能であるという大きなデメリットはあるが、当時はとくに興味を持たなかったので、ダッキーを選ぶことに躊躇いはなかった。
 購入したのは、AIRE社のリンクスU(二人艇)というフネであった。いくつかの選択肢の中からこれを選択したのは、リンクスUがダッキーの中でもトップクラスの安定性と耐久性を誇り、総合的に最もバランスの取れたフネだと思ったからである。二人艇にしたのは、そのほうがキャンプ道具をたくさん積み込めるのでソロツーリングがしやすいと思ったからである。

 2回生の春休み、リンクスに乗って、初めてのカヌー一人旅をおこなった。それでますます川が、カヌーが好きになり、やがて、純粋なダウンリバー以外にも、瀬でサーフィンしたり、ダウンリバーの大会にも出場するようになるなど、遊びの幅に広がりが出てきた。

 リンクスを購入した当初、使用目的はツーリングと激流下りだったので、とくに求めるものは耐久性と安定性ぐらいなものであったが、用途の増えた現在、私が要求するダッキーの性能も増えた。整理してみると、以下のようになる。
項目 内容
スピード 瀞場でのスピード。軽くて、直進性が高い。
コントロール 瀬の中での操作性。回転しやすい、水の抵抗を受けにくい、剛性が高い(変形しない)、排水性が高い。
安定 瀬の中での安定性。全幅、重量がある。
耐久 岩にぶつかったり、底を擦ってもパンクしない、パンクしてもメンテしやすい。
積載 荷物をたくさん乗せられる。剛性が高い。
運搬 運びやすい。軽くて、コンパクトにまとまる。耐久性が高い。
これに基づき、これまでに乗ったことのあるダッキーの性能比較を以下でおこなった。こうすることで、現行の遊び −ツーリング&激流下り&瀬遊び&ダウンリバー競技− に最も適したフネが見えてくるのではないかと思ったからである。
 以上の考察から見て、結局、現在の私の志向である「ツーリング&激流下り&瀬遊び&ダウンリバー競技」を満たすような"オール5"の万能型タイプのフネは残念ながら見つからなかった。ツーリングや激流下りなら"リンクス"、競技なら"サファリ"といったように、ダッキーもカヤックと同様、用途に応じて乗るフネを使い分けなければならないということなのだろう。また、「瀬遊び」ができるダッキーには現在出会っていないので、この性能を備えたフネを今後探さなければならない。

 大学院の卒業間際にクルマの免許を取った。以来、川へはクルマで行くようになったが、カヤックに乗ることはなく、相変わらずダッキーに乗っている。現在所持している3艇のフネは、いずれもダッキーである。
 だからといって、べつにダッキーにこだわりつづけているわけではない。クルマがある現在、「『瀬遊び』ができるフネ」はダッキーである必要はもはやなくなっている。実際、瀬でサーフィンして遊んでいるときは、カヤック(プレイボート)に転向しようかと思うときもある。そのほうが、瀬遊びに関しては確実に奥深い遊びができるからだ。
 しかし、キャンプしながら、焼酎を飲みながら川を下るという遊びはきっと一生止めることはないだろうし、そんな遊びには、やはりダッキーが最もふさわしい。そして今では、犬を乗せて一緒に川下りをしているが、これはカヤックではできないことである。
 近い将来、カヤックに乗ることもあるだろうが、それはきっと全体の一部分であって、犬がいる限りは、ダッキーで下るのがメインでありつづけるのだろうと思う。
DATA
製品名 KXS−375
製造元 アキレス(日本)
全長 375cm
全幅 94cm
重量 16kg
値段 \120,000
DATA
製品名 ヘリオス380
製造元 Gumotex(チェコ)
全長 380
全幅 75
重量 13
値段 75,000
DATA
製品名 K37D
製造元 INCEPT(NZ)
全長 370
全幅 105
重量 19
値段 180,000
【Lynx U】
 最初に購入したダッキー。以後7年間パンクしたことがないという頑丈さ。安定感抜群で、ゴムでできているとは思えないほど剛性が非常に高く、瀬の中でもコントロールが楽。セルフベイラーもまずまずの効きなので、4級未満の瀬なら下れる。激流ツーリングには最適のフネ。ただし、瀞場では重い。スピードに乗れば問題ないが、それまでが大変。逆風のときはかなりツライ思いをする。バックウォッシュでのサイドサーフィンくらいなら瀬遊びも可能。他の遊びもできる可能性も秘めている。
【Safari】
 セカンド艇。軽いのでスピードも出るし、コントロールもしやすいが、剛性が低く、セルフベイラーの抜けも悪いため、いったん水舟になると完全にノーコンになる。また、座る位置が高いので、安定性は非常に悪い。ロールもできそうでできない。激流には不向きだが、スリルはある。また、材質が丈夫でないので、底擦りはNG。荷物もほとんど載らないのでツーリングにも不向き。ただ、小さい波でも乗れるので、瀬遊びには比較的向いている。スピンぐらいなら、練習すればできるかも !?
項目 評価(5段階)
スピード 3
コントロール 3
安定 4
耐久 3
積載 4
運搬 3
項目 評価(5段階)
スピード 4
コントロール 2
安定 3
耐久 2
積載 3
運搬 4
項目 評価(5段階)
スピード 3
コントロール 5
安定 5
耐久 5
積載 5
運搬 2
項目 評価(5段階)
スピード 3
コントロール 5
安定 5
耐久 5
積載 5
運搬 3
DATA
製品名 リンクスU
製造元 AIRE(米)
全長 380cm
全幅 89cm
重量 17.5kg
値段 \248,000?
項目 評価(5段階)
スピード 5
コントロール 4
安定 2
耐久 2
積載 1
運搬 5
DATA
製品名 サファリEX
製造元 Gumotex(チェコ)
全長 304cm
全幅 72cm
重量 12.5kg
値段 \88,000
【KXS-375】
 大会の賞品としてゲットしたサード艇。良くも悪くも柔軟である。3級クラスのストッパーを潰して越えることができない一方で、浅い川で底の岩に当たっても、引っかかることなく滑るようにして下れる。静水でのパドリングタッチは、リンクスより軽いという印象。3級未満の川でのツーリングならリンクスより向いているかもしれない。剛性、排水性がイマイチなので、瀬遊びには向かない。しかし、この値段でこの性能というのは、ツーリング向けとしてはかなりお勧めである。
【Helios 380】
 日本でシェア最大を占めるかと思われるダッキー。理由はそのコストパフォーマンスにある。軽いのでスピードは出るが、おそろしく柔らかいので瀬でのコントロールは難しい。でも案外安定しているので3級未満の瀬ならなんとか下れる。ただし、セルフベイラーがないので瀬を下り終えるたびに水抜きすることになる。丈夫でないので、サファリと同様底擦りはNG。浅い川で二人で乗ると、間違いなく底を破る。瀬遊びには向いていない。2級以下の川でのツーリング用には超お買い得のフネ。
【K37D】
 ダッキーの中でも全幅が最大かと思われる。ラフトに乗っているかのような安定感があり、このフネに乗った後はあのリンクスが狭く、不安定に感じるほど。剛性、耐久性も高いので、激流下りに限って言えば、リンクスよりも優れている。ただし、全幅がある分、若干漕ぎにくく、パドルは240cmは欲しい。また、大きく、重たい分、ソロツーリングでは移動にかなり負担がかかることが予想される。瀬遊びは、リンクスとほぼ同じレベルのことができそうである。
後姿はアヒルがおしりを振って進む様そのもの。
安定性抜群。値段は張るが、それ
に見合う性能はある。
ラナも一番のお気に入りのフネ。
ダウンリバー競技用に購入。
瀬ではスリル満点!ロールはで
きないが再乗艇はなんとか可能。
ストラップとフットブレイスが標準
装備なのが嬉しい。いつ切れるか
不安だが…。
探検部にもともとあった。初めて
乗ったダッキーがこのヘリオス。
ある意味思い出深いフネである。
富士川で二回ほど経験。
パドルが短く、サイドチューブに
指を引っ掛けてすりむいた。
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