通信簿
文章の作成日 / 2003年3月9日
第一回改訂 / 2003年12月29日
第二回改訂 / 2006年6月9日 基準見直し

 上記の項目を基準にして調査をおこなった結果、「良い水辺」と評価された施設系の項目についてみると、ほとんどの箇所で施設整備が行われ、一方、「悪い水辺」と評価された施設系の項目では、施設の整備があまり行われていない、というように分析されている。

 ここでふと感じたことが一つ。
 この分析結果と、私の感じる「良い水辺」と「悪い水辺」はまるで一致しない。というのは、私にとって「良い水辺」とは、あるがままの自然の姿をした水辺であり、整備された川原には魅力を感じないからである。
 私にとって魅力的な川とは、単純にして明快、カヌーで漕ぎたくなる川である。
 では、私は川の持つどういう点に魅力を感じ、漕ぎたくなるのか。基準としているものを具体的に整理し、それに基づいてこれまで下ったことのある川の評価をおこなえば、国交省による「川の通信簿」とはまったく違う結果になるのではないか?と考えたのが、事の興りである。
 評価項目の大分類としての5項目(景観、水質、激しさ、流れ、水量)を、それぞれを10点満点で評価できるようにした細かな基準は以下に記す。

きっかけ
 もともと、「川の通信簿」というものは、全国の一級河川を管理する国土交通省(国交省)河川局が作成したものである。全国の河川空間の親しみやすさや快適性などを調査し、5段階で評価したものであるが、その評価をするために、「自然系」と
「施設系」の二つの面から、以下のような項目が設けられている。
*「川の通信簿」(国交省河川局)より抜粋
評価項目と基準
項目 内容 10段階評価のための基準
景観  カヌーから眺める景色が「すばらしい」川は魅力的な川である。
どのような眺めに価値を感じるかは人によって様々である。私は基本的に自然のままの姿を好むので、人工物が少なく、魚影の濃い川が景観の「すばらしい」川となる。

・人工物(護岸施設、堰堤、公園など)が少ない(2)
・ゴミ(ビニール、缶、タイヤ、車など)が少ない(2)
・魚影が濃い(2)

●ボーナスポイント(上で算出した数値に加点)
・遊べる支流・流れ込み(滝も含む)がある(1-3)
・周囲の山並みが圧巻である(1-3)
・広葉樹が多い(1)
・大きな崖や奇岩が多い(1-3)
・キャンプに適した広い川原がある(1)
・キャンプサイトに虫が少ない、または玉砂利(1)
・沈下橋がある(1)
・珍しい野生動物に遭遇できた(1)
・周辺住民が川に密着した生活を送っている跡がある(1)
水質
 思わず飛び込んで泳ぎたくなるような、どこまでも澄み切った水質を持っていることも魅力的な川の条件である。
 一般的な水質汚濁の指標であるBOD(生物科学的酸素要求量)値を利用すれば客観的な評価ができるのだが、あえて利用せずに、実際に川を見て感じたことを、他の川と比べて、という形で評価した。
●天竜川(鵞流峡)の水質を5としたうえで、以下の観点から他の川を相対的に評価する。
・澄み切っている
・底に泥やヘドロが溜まっていない
・ヘドロ臭い匂いがしない
激しさ  激流志向の高い私としては、激しい川であることも、魅力ある川の条件となる。
 基準には、川下りをする人間が瀬の難易度を測るときに用いる「グレード(等級)」を用いた。つまり、グレードの高い瀬がある川ほど「激しさ」の高い川ということになる。
ただ、同じような瀬であっても、初めて下る川と慣れ親しんだ川、あるいは同じ川でも過去と現在とでは技量が違うので「グレード」にバラツキが生じてしまうという問題がある。それに対しては、「現在(2003年)の技量で初めて下る場合」、と仮定することで整合を図っている。

1…流れなし。もはや川とはいわず湖
2…1級の瀬がある。さざ波が立つ程度。目を瞑ってても下れる
3…1.5級の瀬がある。長いザラ瀬がある程度。泥酔してても下れる
4…2級の瀬がある。漕がないとバランスを崩すが、障害物も落ち込みもない素直な瀬なのでまだまだ飲める。沈しても快適。ダッキーでも初心者はこのクラスまでにしておいたほうが無難か
5…2.5級の瀬がある。瀬に障害物があり、うまくコントロールしないと岩にラップ(張り付き)して沈する。ここから禁酒
6…3級の瀬がある。このあたりからコースを間違えると痛い目に遭う。下るときにちょっとドキドキする。木曾川の富士の瀬などがこのクラスか
7…よりテクニカルな3級の瀬がある、あるいは3級の瀬が多い。障害物が増え、波が複雑になり、選んだコースが正しくてもひっくり返るという理不尽な目に遭う。単独行はこのクラスまでか。長瀞の小滝や富士川の釜口がこのクラスの代表的な瀬
8…さらにテクニカルな3級の瀬がある、あるいは3級クラスの瀬が多い。流れを適切に読み、瀬全体のコースを設定してフネをイメージ通りに操る能力が要求される。瀬の途中で沈するようなところがあり、流されると結構苦しい。長良川の出合い、三股がこのクラスか
9…3.5級の瀬がある、あるいは3級以上のテクニカルな瀬が複数登場する。沈して流されると、ホールに巻き込まれてしばらく横倒しの洗濯機の中に放り込まれたようにモミクチャにマワされることもある。しかし、イメージどおりにうまく乗り越えることができたときは最高に嬉しい一瞬を味わえる。大歩危の三段、国境がこのクラス
10…4級以上の瀬がある。ダッキーではどうあがいても下れないんじゃあないか?って本気で思う。ストッパーを越えたはいいがフネが満水になってノーコンとか、とてつもなく大きな波があらゆる角度から何連発もとか、バックウォッシュに引き戻されてスターン食われたりとかで、とにかく激沈、轟沈のオンパレード。仮に乗り越えるとができたとしても、運が良かったとしか思えないのであまり嬉しくない。小歩危や諏訪峡の瀬がこのクラス
流れ
 常に流れのある川も、私にとっては魅力的である。
理由は単純。流れがあれば、漕がなくても進むので楽だからである。ただし、この数値があまりに高いと、沈したあとリカバリーをする前に次の瀬にそのまま突入、という場合もあるので、数値が高いほど楽だとは一概にいえないのだけれども…。
 客観的な評価方法としては、下る区間の平均流速を測定して他の川と比較するのがもっとも良いかと思うが、そんな術は思いつかない。
 そこで、どうしても感覚的にはなってしまうが、流れがあることを示す指標として瀞場の占める割合を設定した。また、瀞場が多くても瀬が長い箇所があると体感的には流れのある川と感じやすい傾向があるので、そのようなタイプの川はポイントが高めになるようにしている。

 ◆区間中、流速ゼロの瀞場が占める割合
 1〜3
  →コースの7割〜10割が瀞場
 4〜6
  →コースの4割〜6割が瀞場である
 7〜10
  →コース中存在しない〜3割が瀞場である

 ◆ボーナスポイント(上で算出した数値に加点)
 ・やたらと瀬が長い(1)
 ・瀬と瀬の間隔が短い箇所がある(1)
水量  ある地点の容量(CMS)を用いるのが最も客観的な値を得られる手法だと思うが、これまた残念ながら術を持たない。
 そこで、ひとつの川を選択し、基準とすることで他の川の水量を判断することにした。なお、評価値は下った時点でのものであり、必ずしもその川の平水時の水量を評価したものではないことを付記しておく。

●保津川平水時(保津峡観測所:約20cm)を5としたうえで、他の川を相対的に
 評価する。
 1〜3
 支流など小河川。通常時は下れず増水時のみ下れる川が多い。
 知る人ぞ知るマニアックな川、クリークが多い。
 ◆代表例:一之瀬川、海部川

 4〜6
 中規模クラスの河川。ほぼ年間を通じて下れる。全国的に有名な川が多く、
 訪れる人も多い。
 ◆代表例:奈良吉野川、長良川(郡上)、益田川(中山七里)

 7〜10
 大河クラス、または大増水した河川。ファルトで何日かかけてツーリングできる
 川とスリル満点パワーウォーター系の川とに分かれる。
 ◆利根川(雪解け時の水上)、吉野川(小歩危)、四万十川

タイプ
 川を激流、清流、大河の三つのタイプに分類した。分類項ごとに設定した式に従い、上記の五つの要素から計算した。数値が高いほど、その項目の性格を強く持っているといえる。
 ただし、現在のところ、評価の基準となる各項目間で比較ができない。つまり、激流度<清流度という数値であっても、清流色が最も強いとは必ずしもいえないということになることに注意。
・激流…(激しさ×4.5)+(流れ×0.5)
・清流…(水質×4.5)+(景観×0.5)
・大河…(水量×4.5)+(景観×0.5)
点検項目
(自然系)
1.豊かな自然を感じますか
2.水はきれいですか
3.流れている水の量は十分ですか
4.ゴミがなくきれいですか
5.危険な場所がなく安全ですか
6.景色はいいですか
7.歴史・文化を感じますか
(施設系)
8.堤防や河川敷には近づきやすいですか
9.水辺へ入りやすいですか
10.広場は利用しやすいですか
11.休憩施設や木陰は十分ですか
12.散歩はしやすいですか
13.トイレは使いやすいですか
14.案内看板はわかりやすいですか
15.駐車場は使いやすいですか
*評価結果は、下った時点での季節や天気、下る回数によって大きく影響を受けることに注意。
*なお、「通信簿」には「滞在」という項目を加えているが、これは、「その川に訪問して滞在した日数」を示している。
 たとえば、二泊三日のツーリングで、三日間とも川下りをおこなった場合、「滞在」には「3」カウントされるといった塩梅。
 ちなみに、同じ日に同じ区間を複数回下っても、カウントされるのは「1」のみである。
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