ラナにとっては二年目のシーズンとなった2004年。この年は、視界が真っ白になるようなパワーウォーター系の川や、瀬が延々と間断なく続く上流部の川にも果敢に挑戦した。というか、彼女にはフネに乗るか陸に残るかという選択肢がそもそも与えられなかった。
ここで沈して流されたら…、という箇所を下ったのも一度や二度ではなかったが、大きなケガや病気に見舞われることなく、無事にシーズンを終えることができたのは、本当によかったと心の底から思う。
育成に関しては、去年と比べると手間を取られることが随分と減った。身体についてはすっかり大人ではあるものの、精神的にはまだまだ大人の入り口に至ったところかなあとは思うのだが、それにしても犬の成長とは人間のそれとは比べ物にならないほど早いことにただただ驚くばかりである。
実際のところ、手間がかからなくなったと思うのは、飼い主側が単に諦観の境地に至っただけ、あるいは慣れてしまっただけなのかもしれないが。
2004年の育成目標は、飼い始めるにあたって設定した項目をさらに高いレベルで達成することであった。新たに設けた項目といえば、「瀬を怖がらない」の一点のみである。以下、達成状況について確認する。
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目標 |
達成度 |
所感 |
カヌー犬 |
水が好き |
○→◎ |
幾度となく激しい瀬で泳がされたが、水を怖がるようになることは一度もなかった。 |
泳ぐ力がある |
○→◎ |
瀬に自ら飛び込むようなことはしないが、平水の長良川レベルの川であれば、落ちた場合でもフェリーグライドを駆使してエディーキャッチができる。 |
乗り物酔いをしない |
○→◎ |
2004年を通じては、北山川への行程(R169)で一度吐いただけ。8時間運転しても平気。 |
瀬を怖がらない
(新規に設定) |
△→△ |
2級までなら前部にいて、ウェーブに食らいつくほどの余裕を見せるが、2.5級以上になると横向きになり、3級以上で後部にシフト。 |
家庭犬 |
留守番ができる |
○→◎ |
留守中に部屋のものを噛み砕くイタズラは激減した。たまにゴミ箱をあさることもあるが、ご愛嬌。 |
無駄吠えしない |
○→○ |
泳いでいる人間にフネから咆える。自分より位置の低い人間に咆える傾向があるようだ。 |
噛まない |
△→△ |
ストレスが溜まると甘噛みするが、叱ると止める。落ち着くまでの時間が去年より随分短くなった。 |
従順で、物覚えがよい |
△→○ |
家から飛び出す癖があり、クルマに轢かれそうになったこともあったが、叱りつけて以降は合図があるまで飛び出さないようになった。 |
性格が穏やか |
○→○ |
時々スイッチが入り、鬱陶しいくらいに興奮することがあるが、落ち着くまでの時間は去年より確実に短くなっている(と思う)。 |
「カヌー犬」としては、ほぼ目指す姿に近付いているのではないかと思う。大きな瀬を前にしたときはほぼ必ずフネの後ろ側に回りこむようになり、それが原因でウイリー沈をしたこともあったが、カヌーが嫌いになってはいないようである。特筆すべきは泳ぎの上手さ。大歩危は岩原の瀬を筆頭に、今年も色んな瀬を泳いだ(泳がされた)せいか、フェリーグライドやエディーキャッチじみたものまでできるようになった。
「家庭犬」としては、大人しく留守番が確実にできるようになったことと、あと少しは言うことを聞くようになったことが大きいかな。相変わらずテンションは高く、顔中舐め回される者、服を毛だらけにされる者、服を泥だらけにされる者など被害者続出ではあるのだが…。彼らからすれば、上記の評価は「甘い!」とされるかもしれない。
05年は、「家庭犬」の項目を重点的に、現在のおてんばから、もう少しおとなしい娘さんになるべく育てたいと思う。そろそろ年頃だし。
ダニとノミ
市販のクスリでは、水につかると効力がなくなるため、カヌー犬には使えない。今後の課題。
●カヌー犬ジェットとの出会い−対犬関係
リードなしで散歩中に同じくリードなしの犬に追いかけられ、しばらく迷子になるといったことも。
【膀胱炎】 (6月13日 櫛田川)
膀胱炎にかかってしまった。トイレは、1日に朝夕の2回行っており、これまでそれで問題はなかったのだが、あるとき突然血尿をし、おしっこの頻度が高くなった。残尿感があるようで、実際はおしっこをしていなくても、ポーズだけを取る。カヌーのときは、フネから降りては陸で用を足し、また乗り込むことを頻繁に繰り返していた。
行きつけの病院に連れて行くと、膀胱炎と診断され、ひとまず炎症止めの注射をしてもらい、錠剤をもらった。
この薬を飲ませるのに、意外と苦労した。ドッグフードに混ぜても、まず食べないし、ささみの中に混ぜ込んでも、後で吐き出すのである。しばらく知恵比べが続いたが、最終的には、口を開けさせ、薬をノドの奥をめがけて指で弾き、飲み込むまで口を押さえるというかなり強引なやり方を取った(詳しいやり方は『動物のお医者さん』を参照)。
原因が結石によるものなのか、細菌によるものなのか、その後再度病院にて尿の検査をしてもらい、結果、細菌性のものと判明。おしっこの頻度はしばらくは高かったが、抗生物質のおかげか血尿は間もなくおさまり、2週間ほどで1日2回のペースに戻った。
後になって分かったことだが、どうやら生理と併発していたようである。また、メスは身体の構造上、もともと膀胱炎に罹りやすく、また、一旦治ったように見えても、膀胱内の細菌が死滅せず、再発するケースがあるらしいので、継続的に注意する必要がある。
【フカヅメ】 (10月2日 長良川)
アウトドア犬の宿命か、ラナはたまにケガをする。
このときは増水した長良川での出来事だった。迂闊にも沈してしまい、リカバリーしてラナを引き上げると、足から大量に出血していた。原因が分からない。流された際に、爪が剥がれたのか、何かが刺さったのか、それとも切ったのか。川くだりを取りやめ、すぐに病院に連れて行くことにした。
回送してきたクルマに載せていたガーゼとテーピングでまずは止血のための応急処置を施す。だが、どこに病院があるのか分からない。そこで、知り合いの地元ラフト会社の社長に電話して聞く。この方なら、「つくね」というラブを飼ってはるので、知っているはずと考えたのである。果たして、「郡上八幡動物病院」を紹介してもらい、ラナを乗せてすぐさま向かった。
病院に到着。当日は土曜日で、しかも日中のため休診中だった。しかし、電話からお願いしたところ、快く引き受けてもらえた。
原因は、爪が欠けたことによるものだった。
「このワンちゃんは激しい運動してますね。爪がほとんど残ってないですよ。だからちょっと欠けただけで血が出ちゃうんですよ。フツーに散歩させるのは問題ないんですが、しばらく、岩場など歩かせるのは控えたほうがいいですね。岩場を歩くと爪が磨り減っちゃうので」
いわゆるフカヅメのような状態であったらしい。出血は病院に到着した時点で既に止まっていたが、念のため、血止めの粉薬を患部に付けてもらった。
その後、早くも午後から戦線復帰。ラナはこっちの心配をよそに走り回っていたが、幸いにも出血することはなかった。
今回はたまたま病院の位置を知っている知人がいたからよかったようなものの、これが長良川以外の川だったら、と思うと冷や汗モノである。川下りの際には、近辺に動物病院があるかどうか事前に確認しておくことが必要だと痛感した。
【肉球を切る】 (12月23日 奈良吉野川)
肉球のケガは去年(2003年)も何回かしたことがあったが、今年(2004年)もやってしまった。いつもの川のいつもの場所だったので、まったくノーチェックだったのだが、後で見ると缶やら陶器の破片やらガラスやら不燃物を大量に燃やした跡があり、危険極まりなかった。案の定、どこかでガラスを踏んだのか、肉球を少し切ってしまっていた。
人が少ない川原は、ラナをフリーで遊ばせるにはもってこいのフィールドだが、管理がされていない。こういった燃えないものをなぜ燃やそうとするのか、訳が分からないし、それを処理せず放置したままなのも訳が分からないが、このようなリスクが常に付きまとうことに注意しなければならない。