日本三大急流への挑戦!
河川名 区間 日付 当日のコンディション 河川データ(私の「川の通信簿」より)
水位 天気 激しさ 流れ 水質 景観 水量 タイプ
激流 清流 大河
富士川 十島〜蓬莱橋 020727 -4.74m(北松野) 快晴 7 5 5 7 7 68 52 70
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真夜中のバーベキュー。明かりがなかったので、闇ナベの様相を呈していた。
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一日めいっぱいかけて静岡は富士川をカヌーで下ってきました。会社の同期を5人ほど連れて、全部で5艇という大艦隊でのダウンリバーです。

 横浜を出たのは22時ごろでしたかね。現地に到着したのは夜中の2時。で、なぜかそこからバーベキューが始まりました。メインは豚トロ。何気にこの日までその存在を知りませんでしたが、美味い。しかし、明かりがない。焼けてるのか生なのか、ちっとも分かりません。夜中にやるならランタンくらい誰か持ってこいと。結局、寝たのは夜も白んできた5時。ほとんど寝てねえですよ。これだから営業系の会社は…。

 ナチュラルアクションという芝川にある現地のラフティングカンパニーを訪問し、今日の装備一式をレンタル。寝起きでとっても機嫌の悪そうなお兄さんがとっても無愛想に対応してくれました。まあ、ダッキー貸してといってもなかなか貸してくれるところがないので、貸してくれるだけいいんですけどね。借りたフネはインセプト。あのリンクスよりも横幅が広く、安定性抜群の不沈艦なので初心者でも問題なさそうです。
 富士川の水位は結構多め(-4.74m:北松野)です。5月末に初めて下ったときは水位が-5.4m(北松野)でかなりショボかったんですが、今回はかなり面白そうです。二週間ほどまえに台風の影響で大増水(北松野で+7mほどアップ)した影響がまだ残っているようで。

 スタートは、前回出発した前釜の瀬手前よりもさらに上流の十島駅からにしました。「十島の瀬」という大きな瀬があるらしく、そいつにチャレンジしてみたかったので。実際、なかなか迫力のあるハイウェーブな瀬でした。スタートを上流にして良かった。連れてきたメンバーも大満足の様子。一人くらい沈するかなーと思って下流で待ち構えていましたが、さすがは不沈艦インセプト。漕がなくても、くるくる回りながらも危なげなく下ってきます。 

 この十島の瀬を過ぎ、万栄橋をくぐってしばらくは2級程度の快適な瀬が続きます。波は大きいですが、素直なので御しやすい。鮎釣りシーズン真っ最中で、釣り師とのトラブルを懸念していましたが、確かに数は多いですが、川幅が広いので避けられないことはない。ダムの影響か、工事の影響か、水が白濁していて若干汚いのが惜しいですが、晴天のおかげで漕いでいてとても気持ちがいい。他のメンバーも満面の笑顔。楽しんでもらっているようです。
 
やがて、とある瀬で1艇が瀬の真ん中にあるテトラの残骸に張り付いてしまいました。フネが完全にラップした状態でまったく動かず、彼らは岩の上に立ち往生。他のメンバー全員を瀬の下の瀞場で待機させ、私は一人瀬の上流に陸づたいで上がり、瀬を泳いで事件発生現場へ。水圧が思った以上に強く、あれこれ10分近くかかってようやく剥がせました。

 そんなイベントも含め、その後も流れ込みで遊んだり、川原で寝転がったりしながら漕ぎ進むと、前回のスタート地点へ到着。この先に富士川メインの瀬、「前釜の瀬」と「釜口の瀬」が控えています。
 最初が前釜。バラバラだったフネを集結させて、順次突入。増水の影響でストッパーもかなり大きい。瀬を下りきり、振り返ると
1艇が沈。あのインセプトが…。スポットで遊んでいたカヤッカーにも助けてもらいながら、釜口の瀬の手前までに無事レスキューしました。ここで釜口も連続して泳ぐとかなりツライですから。前釜の瀬を下り終わった後、もう一度フネを集め、左岸に付けて「釜口の瀬」を下見。

 釜口の瀬。戦前、舟運が中心だったころ、船頭たちに難所のひとつとして怖れられていた場所です。川幅が一気に狭まって、それこそ釜の口のように細くなっていることから名付けられたらしいです。現在こそダムで寸断され、おとなしくなってしまいましたが、かつて日本三大急流の一つに数えられ、暴れ狂っていた時代をほんのちょっと想起させる瀬です。
 前回は渇水で、フネが底擦るくらいだったんですけど、今回、それとは比べものにならんくらいドドドドドドドっていう轟音が何十メートルも前から響いてきます。左岸の岩をつたって近づくと、流れが正面の大岩にぶつかって右側に落ちるのが見えるのですが、落ちる先までは見えないんです。まるで天動説でいう地の果てのような。こりゃあ(私以外は)みんな沈するやろから、レスキューの用意を万全にしとかんななあ…。そう思いながらフネに戻り、一番手で降下。落ち込み手前の大岩の前で一旦エディーを取り、覚悟を決めて「地の果て」の先へ突入。
 思っていた以上にえげつない落差。眼前は一瞬で白泡の世界に様変わり。落ち込んだ先には、コブのような波の盛り上がりができていて、それがちょうどジャンプ台の役割を果たしたようで、フネが空に跳ね上げられ、後傾姿勢のまま着水。そこに押し寄せる波を食らい、あっという間に轟沈。やられた! しかし、川下ってて、空飛ぶ思いをするとは思いませなんだ。

 幸い、短い瀬なので、まもなく流れが緩くなったところでフネを戻してリカバリー。右岸側のエディーに流されてしまったポンプを除き、流出していたアイテムはすべて救出。後続は激沈間違いなしと思い、ポンプは後回しにしてレスキュー体制に入りました。
 
1艇は落ち込みの前でなぜか転覆し、人がフネと大岩に挟まれるというかなりヤバいことになっていたらしいですが、無事(!?)一緒に流されてきました。もう1艇の前釜でも沈したフネは落ち込みで沈。どういう原理か、フネが大ジャンプして空に舞っていました。凄惨な光景。残り2艇はなんと無事でした。不沈艦インセプトとはいえ、コイツラ、初めての川下りなのに…。彼らに対しては立つ瀬がありませんでした。
 その後、右岸側のエディーに引っかかっていた流出品を取りにいったはいいのですが、タコツボになっていてなかなか出られない。するとラフティングカンパニーの方がやってきて手伝ってくれました。感謝の意を述べると、
「いや〜、こちらもいいもの撮らせてもらったんで」とのこと。どうやら、一部始終をビデオカメラで撮影してたようです。沈して激流を身一つで流されてるのも、流した荷物を必死で回収してたのも…。

 ちなみに、前釜、釜口で連続沈した彼は完全に心が折れてしまい、軽いパニックで漕げなくなってしまいました。とはいえ下り続けたい意向はかろうじて持っていたので、二人艇に乗っていた方と交代してもらい、継続して下ります。

 その後もドラゴンの瀬など結構大波の立っている瀬がありましたが、何とか全員無事にゴールの蓬莱橋へ到着。心の折れた彼も復活したようで、めでたし、めでたし。いやはや、前回の経験からかなりナメてかかっていましたが、なかなかどうして、日本三大急流の名に恥じない、かなり迫力のあるダウンリバーでした。釜口の瀬では惨敗でしたが、改めて挑戦したいものです。
慣れないテント泊と睡眠不足のため、朝は全員ナチュラルハイ状態。
万栄橋をバックに。ここから下流は、穏やかな流れの中に、退屈しない程度の間隔で2級程度の瀬が混じる。
文書の作成日 2005年1月3日
テトラポッドの残骸にラップ。フネが重いためなかなか剥がれず、悪戦苦闘の末ようやく引き剥がしに成功。
小さな滝状の流れ込み。今回参加したメンバーは総じてこうした箇所に登るのが好きでした。
激流のイメージ色の強い富士川だが、このような雄大な大河を連想させる一面も持っている。
ゴールの蓬莱橋下。約一名、精神的にKOされたものの、全員無事で良かった!
日本三大急流への挑戦、そして敗退
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